和のボタニカルが織りなすジンの「個性」

ボタニカルとは、ジンに香りや風味を与える植物のことです。ジンに欠かせない主原料が「ジュニパーベリー」で、これはヒノキ科の常緑樹ジュニパーの果実にあたります。北半球の広い地域で育ち、爽やかで少しスパイシーな香りがジンの基調となります。

日本のクラフトジンは、このジュニパーベリーに加え、日本人にとってなじみ深い和のボタニカルを積極的に取り入れています。これらの素材がもたらす繊細で豊かな香りは、ジンに唯一無二の個性を与え、飲むたびに新しい発見をもたらしてくれます。まるで日本の四季や風景を閉じ込めたかのような、奥深い味わいを楽しめるのが魅力です。

地域性が生み出すジンの「ストーリー」

日本各地にある蒸溜所では、その土地でしか手に入らない特別なボタニカルや、清らかな水を使用しています。例えば、海辺の蒸溜所では海藻を、山間部では山菜やハーブを取り入れることがあります。これらは単なる原材料ではなく、その土地の風土や文化を物語る大切な要素です。

ボトルを手に取ったとき、そのジンが生まれた土地の情景を思い浮かべることで、味わいはさらに深まります。このように、地域のストーリーを楽しみながら味わえることも、国産クラフトジンの大きな魅力の一つです。

初心者でも楽しめるクラフトジンの選び方

初めてクラフトジンに挑戦する方でも、いくつかのポイントを押さえることで、自分好みの一本を見つけやすくなります。

香りの好みで選ぶ

ジンは香りが重要な要素です。柑橘系の爽やかな香り、ハーブ系のすっきりとした香り、スパイス系の複雑な香りなど、まずは好みの香りの系統から選んでみるのがおすすめです。ラベルに記載されたボタニカルを確認すると、香りのイメージがしやすくなります。

飲み方で選ぶ

ストレートでボタニカルの風味をじっくり楽しみたいのか、ソーダ割りやカクテルで爽やかに飲みたいのか、飲むシーンや好みに合わせて選ぶ方法もあります。軽やかな味わいのものはソーダ割りに、ボタニカルの豊かなものはストレートやロックでじっくり楽しむのが向いています。

Draught Absinthe（生アブサン）

アブサン伝統とアイヌ民族ゆかりのボタニカルを、積丹の自社農場産生原料で減圧蒸溜した、瑞々しい香りが広がる生アブサンです。ニガヨモギの苦みやフェンネルの甘みなど、フレッシュでグリーンな味わいです。

BOUQUET LIQUEUR HAMANASU（ブーケ リキュール ハマナス）

芳醇な甘さとバラの華やかな香りが特徴の深紅のリキュールです。ローズの華やかさにハイビスカスの酸味を加え、氷砂糖でじっくり浸漬させたシロップ仕立ての芳醇な味わいを楽しめます。

UMI（うみ）

北海道積丹の森と海、今と昔を繋ぐ原風景を表現した孤高の蒸溜酒です。積丹の厳しい断崖に自生するミヤマビャクシンの力強く繊細な香りを核とし、春を告げるフキノトウの大地の旨味や潮の香りが特徴です。まろやかな口当たりにほのかな甘みと、波のように寄せる旨味と塩味の余韻が心地よく、海鮮や和食材との相性も抜群です。

KIBOU BLUE

積丹ブルーの海をイメージした蒸溜酒です。アカエゾマツの深いオレンジが基調で、北海道・積丹町産のボタニカルを使用しています。美しい海への願いを込め、売上一本につき100円がウニの餌場再生に寄付されます。

KIBOU 海底熟成

大地の恵みを受けたKIBOUを、積丹町宝島の「海底セラー」で約400日間熟成させた蒸溜酒です。海のランダムな自然の波動が熟成を促し、紫外線から守られた低温環境で、穏やかで深みのある華やかな風味と、シトラス系のほのかな甘い余韻が特徴です。

アカエゾマツがもたらす清涼感

アカエゾマツは、北海道の豊かな森を象徴する樹木です。このボタニカルは、ジンにどこか懐かしい、爽やかで清涼感のある香りを与えます。新芽を乾燥させることで、熟成したオレンジのような香りに変化することも特徴の一つです。この香りがジュニパーベリーと重なり合うことで、まるで生命力に満ちた針葉樹林を散策しているかのような、青々とした心地よい風味が楽しめます。

エゾミカンの爽やかな余韻

エゾミカンは、北海道に自生する貴重な柑橘類です。直径わずか1センチほどの小さな果実ですが、ミカン科らしい爽やかな香りをジンに添えます。この香りは、ジン全体のバランスを引き締め、飲むたびに心地よい余韻を残してくれます。この爽やかなほろ苦さが、味わいに奥行きを与え、飲み飽きない魅力につながっています。

キタコブシが運ぶほのかな甘み

キタコブシは、北国に春の訪れを告げる美しい花です。その白い花が放つ優雅な香りは、ジンに繊細で上品な甘みを与えます。強すぎない、ほのかな甘みは、他のボタニカルの香りを邪魔することなく、ジン全体の風味をまろやかにまとめ上げます。この優しい甘さが、ジンの口当たりを良くし、初心者の方でも飲みやすく感じさせてくれます。

ヤチヤナギのスパイシーなアクセント

ヤチヤナギは、株全体に芳香を持つユニークな植物です。特に果実の香りは強く、スパイシーで複雑なニュアンスをジンにもたらします。このボタニカルが加わることで、ジンの味わいに個性的なアクセントが生まれ、味の深みが増します。他のボタニカルの風味を際立たせながら、ジン全体の味わいに力強さを加えてくれる重要な存在です。